私たちの国・日本には、古来より連綿と受け継がれてきた独自の霊能術・霊媒術があります。それらの霊能力を有する人を広義に霊能者あるいは霊媒師と呼び、伝統として守り続けてきました。基本的には民間伝承であり、全国的に知られると言うよりは、たとえば陸奥のイタコ、沖縄のユタ、奄美諸島のノロなど、各地域内でのみ知られ受け継がれてきたケースが多いことが特長とも言えます。
こちらでは、そんな日本独自の霊能術・霊媒術を受け継いだ存在についてご紹介していきます。
第1回 イタコ
日本独自の霊能者として、一番知名度があるのはイタコであると言えます。主に東北、中でも特に青森県の陸奥や下北半島で、その歴史と伝統を守ってきたイタコ。なぜその場所でイタコは今もなお続いているのか。それは青森県やその地方の人にとって、“人は亡くなったら、魂が必ずそこへ向かう”と言われている恐山があるからに他なりません。比叡山、高野山と並ぶ三大霊山として仏教徒の修行の場であるだけでなく、イタコにとっても恐山は修行の場であり、死者の魂に一番近付ける場所でもあるのです。ある老齢のイタコは盲目であるにも関わらず、しょっちゅう空を見上げては「ああ、今日も魂がオヤマ(恐山)へ飛んで行くのが見える」と口にするとか。
■イタコの特長
電話占い浄恵では、イタコのことを霊能者と紹介しています。ただ、“自らの身体を媒介として、霊を降霊(憑依)させる”ため、実際には霊能者と言うよりも霊媒師と呼ばれることが多いとも言えるでしょう。
人に限らず、生物の本質はその魂(精神)にあります。魂には、経験や感情などの記憶が記録され、今世の出来事を生まれ変わる来世に引き継ぐこととなります。ですから魂と交信できる、魂を口寄せできるということは、その人そのものと接点を持つこととなんら変わりは無いのです。しかしながら、他人の魂を憑依させることは、イタコにとってもリスクを背負うことになります。憑依させている間も自分の魂は肉体に留めているとは言え、気を抜くとそのまま他人の魂を肉体から離すことが難しくなることもあるからです。確かにイタコ自身の能力以上の魂や霊、たとえば高次霊界にいる神仏霊などは最初から口寄せ不可能としても、人の魂などはイタコ自身の霊能力で抑えられると高を括っていて、足元を掬われる可能性がゼロではないのです。
■イタコの霊媒術
ひと口に降霊や口寄せの霊媒術と言っても、魂の種類や対象によっていくつかの呼び名に分けられます。
生口(いきくち)
生きている人の魂、あるいは生き霊を口寄せする降霊術です。電話占い浄恵のイタコ霊能者では、主に[相手の本心を知りたいとき][生き霊絡みの霊障相談のとき][居場所がわからない相手との復縁成就のとき]などに用いられます。
神口(かみくち/かむくち)
高次霊界や宇宙界にいる神仏霊などを呼び出し、運命や宿命に関しての託宣や神託を得る際に行なわれる降霊術です。[自分自身の運命の相手を知りたいとき][いつ、どんな相手と結婚出来るのか未来を知りたいとき][運命を好転させる正しい選択を知りたいとき]などに用いられます。
仏口(ほとけぐち)、死口(しにくち)
仏口と死口はいずれも、亡くなった人の霊体を口寄せする霊能術です。亡くなってから四十九日経っているか否かの違いであり、死者霊を降霊させることには違いがありません。[亡くなった人の意思を知りたいとき]には最適な霊能術です。伝統的なイタコが本来行なうのは、この口寄せになります。
基本的に相談者の方から寄せられるのは、まさに今生きている相手との恋愛成就や人間関係の改善に関する相談です。ですから電話占い浄恵のイタコ霊能者も、もっとも多く用いる口寄せ霊能術は[生口]になります。相手の本心を読み取り、二人の未来や運命を的中させるには、本人の魂を憑依させる生口がとても有効なのです。
■イタコが直面する問題
同じく古来より続く日本独自の伝統霊媒師で、たとえば沖縄(琉球)のユタなどは今でも5000人近くいると言われています。一方でイタコは、メディアにも名前を出してお客を取っているイタコや、ひっそりと口コミや青森県や陸奥などに住む身近な人のみからの相談を受けているイタコを含めても、その十分の一もいないと言われています。そのため今、イタコは後継者不足という問題に直面しているのです。
イタコは上記で述べてきたように、生者・死者の魂を憑依させる霊媒師です。生まれ持って、あるいは開眼した高い霊能力と霊媒能力、精神力が無くては成れるものではないのです。またイタコの祭文・呪文は師匠イタコからの口伝であり、修行を経ずに一朝一夕にイタコとして独立ができるわけでもありません。修行は肉体的にも精神的にも重圧が凄まじく、電話占い浄恵に在籍するイタコ霊能者も、「師匠の元から何度も逃げ出そうとした」と口を揃えるくらい大変なものなのです。
現在のところ、イタコの後継者不足に決定的な解決策はありません。このまま日本独自の霊媒師の伝統が、消えてしまうことだけは無いようにと願うばかりです。